「12月末で退職する予定だけど、年をまたぐと失業保険ってどうなるの?」
そんな疑問を抱く方は少なくありません。
実は、年をまたいでも失業保険は「もらえなくなる」わけではありません。
ただし、退職や手続きのタイミング次第で損をするケースがあるのも事実です。
例えば、
- 離職票の発行が年明けにずれ込み、手続きが遅れる
- ハローワークが正月休みで開いておらず、給付開始が遅れる
- 税金・健康保険・住民税などの切り替え時期が重なって混乱する
といった「年末特有の落とし穴」が存在します。
この記事では、12月退職と1月退職で何がどう違うのかをわかりやすく整理し、
「損をしないためのポイント」を具体例付きで解説します。
結論:年をまたいでも「もらえなくはない」が、タイミング次第で損をする

結論から言うと、失業保険は年をまたいでも支給対象外にはなりません。
ただし、次の3つの理由で「結果的に損をした」と感じる人が多いのです。
給付開始時期が年明けにずれ込む
→ 離職票の発行が遅れ、申請が翌年になると待機期間もずれます。
税金・社会保険の年度区切りが変わる
→ 所得税・住民税・健康保険料などの計算基準が「年単位」で変わるため、
退職月をまたぐことで手取り額に差が出る場合があります。
ハローワークの閉庁期間により手続きができない
→ 年末年始(概ね12/29〜1/3)は窓口が休みです。
実際には「7日間の待機+給付制限3か月」があるため、
1週間遅れるだけで支給開始が2月中旬以降になるケースもあります。
つまり、年をまたぐこと自体が問題ではなく、
「いつ離職票を受け取り、いつハローワークに申請するか」が損得の分かれ目です。
失業保険の基本ルールを簡単におさらい

失業保険(正式名称:雇用保険の基本手当)は、
「働く意思と能力があり、すぐにでも就職できる人」が対象となる公的給付制度です。
退職すれば自動的にもらえるわけではなく、
ハローワークでの申請手続きと待機期間を経て、はじめて給付が始まります。
受給の流れ(おおまかな時系列)
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① | 会社から「離職票」を受け取る | 退職後10日〜2週間ほどで発行されることが多い |
| ② | ハローワークで求職申込み | 離職票・本人確認書類・印鑑などを提出 |
| ③ | 7日間の待機期間 | その間に就職・収入があるとリセットされるので注意 |
| ④ | (自己都合退職の場合)給付制限3か月 ※条件付きで1ヶ月 | 実質、退職から3〜4か月後に初回支給となる ※給付制限が1ヶ月の場合は1~2ヶ月後 |
| ⑤ | 失業認定日ごとに手当が振り込まれる | 通常は4週間ごとに支給 |
この流れの中で重要なのが、
離職票の受け取り時期とハローワーク開庁日の関係です。
たとえば12月下旬に退職しても、離職票の発行が1月上旬にずれ込むと、
①の手続きが年明けになるため、待機期間や給付制限のカウント開始も翌年になります。
このズレが「年をまたぐと損する」と言われる主な理由の一つです。
受給資格の目安
失業保険を受け取るには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 雇用保険に通算12か月以上(2年以内)加入していること
- 退職時点で就職する意思と能力があること
- ハローワークで求職申込みをしていること
パートや契約社員でも、週20時間以上働いていれば対象になりますよ!
注意:年末の退職は「手続きの遅れ」に要注意
年末年始は企業も役所も休みが多いため、
離職票の発行・郵送・ハローワークの受付が重なって遅れやすい時期です。
そのため、「退職届を出す時期」や「会社への離職票発行依頼」を前倒ししておくことが大切です。
早めに準備しておけば、年をまたいでもスムーズに受給手続きが行えます。
退職後にハローワークで失業給付を受け取る手続き(2025年法改正版)

自己都合退職の場合でも、一定の条件を満たせば「給付制限期間」が1か月に短縮されるようになりました(従来は2~3か月)。
以下は、2025年3月以降の最新ルールに基づいた流れです。
ハローワークでの手続き
退職後、住民票のある地域のハローワークで「求職申込み」を行います。
持参するもの:
- 雇用保険被保険者証
※手元に無ければその旨を申し出ればOKです - 離職票(1・2)
- マイナンバーカードまたは身分証
- 印鑑(署名対応で不要な場合も)
- 通帳またはキャッシュカード
※ネット銀行の場合、名義と口座番号がアプリなどで確認できれば、画面を見せて確認してもらいます。
給付制限の期間
2025年3月以降は、自己都合退職でも以下の条件を満たせば1か月の給付制限に短縮されます。
▼短縮の対象となる主なケース
- 離職前2年間に、同じ会社で通算1年以上の雇用保険加入がある
- ハローワークでの早期就職活動(積極的な求職姿勢)が確認できる
従来の「原則2~3か月の給付制限」は、上記条件を満たさない場合や、短期離職・転職を繰り返している場合などに適用されます。
出典:厚生労働省「雇用保険制度の見直し(令和6年10月施行)」
👉 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
給付開始までのスケジュール例
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 退職後1〜7日 | 待期期間(全員対象) |
| 待期終了後〜1か月 | 給付制限期間(自己都合の場合) |
| 約1か月経過後 | 失業認定を受け、基本手当支給開始 |
※会社都合や雇止めなど、非自己都合の場合は給付制限なしで支給開始。
その他の注意点
- 給付制限短縮を受けるには、「早期の求職申込み」と「積極的な活動」が前提です。
- 実際の支給開始日は、ハローワークの認定日程により前後する場合があります。
- 年明け入社など、短期のブランクでも「求職活動実績」が必要です。
ここまでで、失業保険の仕組みと「年またぎで損をする理由」が明確に整理されました。
次のパートではいよいよ、
「12月退職」と「1月退職」で具体的に何が違うのか?
を数値と事例で比較していきます。
コラム:給付制限明けに就職できそうな場合の考え方
自己都合退職の場合、給付制限期間は原則1か月に短縮されましたが、
もし「その頃には就職先が決まりそう」という見込みがある場合、
あえて受給資格を申請しないという選択肢もあります。
🔷メリット
- 手続きやハローワークへの通所などの手間を省ける
- 次の就職先で長続きしなかった場合、加入期間を通算した状態で失業手当を受給できる可能性がある
- 就職が早ければ、結果的に手当を受けなくても損失はない
🔷注意点
- 受給資格を取らないと、後から遡って申請はできない
- 就職が遅れた場合、給付を受けられないまま自己負担が増える
- ハローワーク上の「求職活動記録」が残らない
🔷判断の目安
給付制限明け(退職から約1か月後)までに確実に就職できる見込みがある場合は、
受給資格を取得しない選択も現実的です。
基本手当(失業手当)がある程度残っているともらえる一時金である「再就職手当」は、
給付制限中の就職には「ハローワーク又は職業紹介事業者の紹介で就職した場合が対象」という条件が追加されます。
就職先と入社時期を相談できればよいかもしれませんが、企業も人員が不足しているから募集をしているのでこちらの都合をすべて配慮してくれるとも限りません。
年末退職・年明け退職で何が違うのか?

同じ「自己都合退職」でも、退職日が12月か1月かによって、雇用保険や社会保険、失業給付の扱いに細かな違いが生じます。
年末ギリギリのタイミングで迷う方が多い部分ですので、主要な違いを整理します。
失業給付の受給開始時期
| 項目 | 年末(12月)退職 | 年明け(1月)退職 |
|---|---|---|
| ハローワーク手続き開始 | 年明け早々から可能 | 退職日が過ぎてから(1月中旬頃) |
| 待期7日+給付制限1か月 | 1月上旬にカウント開始 | 1月下旬〜2月頃にカウント開始 |
| 実際の給付開始見込み | 2月上旬〜中旬 | 3月上旬〜中旬 |
💡 早く求職活動を始めたい場合は年内退職が有利になります。
ただし、退職日を年内に設定するためには、年末最終勤務日や会社の締め日を考慮する必要があります。
社会保険の加入・未加入期間
| 項目 | 年末退職 | 年明け退職 |
|---|---|---|
| 社会保険の資格喪失日 | 退職日の翌日(例:12/31退職→1/1喪失) | 退職日の翌日(例:1/5退職→1/6喪失) |
| 1月の保険料の発生 | 原則なし(12月分まで) | 発生あり(1月分) |
年明けに退職すると1月分の社会保険料を1か月分余計に負担するケースがあります。
一方で、年内退職は保険料の節約にはなるものの、1月は無保険期間となるため、国民健康保険の加入手続きを早めに行う必要があります。
年金・税金への影響
- 年内退職の場合:
→ 翌年(1月以降)に国民年金へ切り替え。
→ 年末調整を受けられない場合、確定申告で精算が必要。 - 年明け退職の場合:
→ 1月給与に年調整分が含まれることが多く、確定申告不要なケースも。
→ 社会保険料控除も含まれやすい。
税金面では年明け退職のほうが整理がスムーズな一方、給付開始の早さでは年末退職が有利です。
総合的な判断の目安
| 優先したいこと | 向いている退職時期 |
|---|---|
| 給付を早く受け取りたい | 年末退職 |
| 保険・税の手続きを簡潔にしたい | 年明け退職 |
| 年内は社会保険料を節約したい | 年末退職 |
| 年明けから新しい会社に入りたい | 年明け退職 |
退職日を決めるときに気をつけたいポイント

年末退職・年明け退職には、それぞれメリットとデメリットがあります。
最終的に後悔しないためには、「退職日をどう設定するか」が最も重要です。
ここでは特に注意したい3つのポイントを整理します。
会社の締め日・最終勤務日の確認を忘れずに
会社によっては、
- 月末締め(12/31退職扱い)
- 20日締め(12/20退職扱い)
など、給与計算の締め日が異なる場合があります。
この締め日をまたいでしまうと、社会保険料や年末調整の対象月が変わるため、思わぬ控除や未払いの発生につながることもあります。
退職を申し出る際には、「最終出勤日」と「退職日(籍が抜ける日)」を必ず確認しておきましょう。
社会保険・年金・税金の切り替えをスムーズに
退職後は、次の3つの手続きがほぼ同時に発生します。
- 健康保険:国民健康保険への加入 or 任意継続
- 年金:国民年金への切り替え
- 税金:住民税・所得税の精算(確定申告が必要な場合あり)
年末退職の場合は、翌年1月から国民健康保険・国民年金の加入が必要です。
一方、年明け退職の場合は1月分の社会保険料を給与から天引きされるため、切り替えのタイミングが1か月後ろ倒しになります。
どちらにしても、「退職後14日以内」を目安に手続きを進めると安心です。
出典:日本年金機構「国民年金への切り替え」
👉 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20150401.html
出典:国税庁「給与所得者の確定申告」
👉 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
失業給付の手続きは、退職証明書を受け取ってから
失業給付を受け取るには、ハローワークでの手続きが必須です。
ただし、退職直後に行っても「離職票」がまだ会社から届いていないケースが多く、受理されません。
離職票の発行は通常、退職から1〜2週間後です。
書類が届き次第、すぐにハローワークへ持参し、待期7日+給付制限1か月(自己都合の場合)のカウントを早く始めることがポイントです。

最終支払い給与が確定してから発行する、という会社もあるので
発行までに退職後1ヶ月くらいかかってしまうケースもあります……
人事担当者にあらかじめ「いつ頃発行できますか?」と
聞いておくと安心ですね💡
まとめ:焦らず、でも手続きは早めに
年末年始の退職は、カレンダー上の違いが大きく影響します。
年末退職は「早く給付を受けられる」「保険料が節約できる」反面、年明けすぐの手続きラッシュが発生します。
一方、年明け退職は「事務手続きがシンプル」ですが、給付開始が1か月ほど遅れる点に注意が必要です。
自分にとってどちらがストレスなく進められるかを軸に、計画的に退職日を決めましょう。
※本記事は厚生労働省・ハローワーク等の公的情報をもとに2025年11月時点で作成しています。
制度内容は将来的に変更される可能性がありますので、最新情報は各公式サイトをご確認ください。
参考・出典
- 厚生労働省:「雇用保険制度の見直し(令和6年10月施行)」
- ハローワーク公式:「雇用保険の基本手当(失業給付)」
- 日本年金機構:「国民年金への切り替え」
- 国税庁:「給与所得者の確定申告」


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